AIや自動化の進展によって、世界の働き方や職業構造が大きく変わろうとしています。そうした中、アメリカの企業である Walmart(ウォルマート) は、社員が時代の変化に対応できるよう「再教育(リスキリング)」や「スキル転換」に本格的に取り組んでいます。AI時代を見据えた人材戦略が企業に広がりつつあります。
Walmart(ウォルマート)とは
Walmartは1962 年にアメリカ・アーカンソー州で創業された世界最大の小売企業です。ディスカウントストアやスーパー、オンライン販売などを展開し、世界19カ国以上で約 1万店舗を運営してます。社員数は 全世界でおよそ210万人と、米国最大の企業でもあります。
「We Save People Money So They Can Live Better(私たちは低価格で価値ある購入体験を提供し、消費者のより良い生活の実現に寄与します)」を企業理念に掲げ、効率的な物流網とスケールメリットを活かして成長してきました。近年では、AI・データ分析・ロボット技術の導入にも積極的で、店舗運営や物流の自動化を進めています。
AI時代に向けた「スキル・ファースト」戦略
Walmartは、AIの進化によって仕事の内容や求められるスキルが大きく変わると考えています。そのため、同社は「Skills-First Workforce Initiative(スキル重視型人材育成プロジェクト)」に参加し、学歴よりも何ができるかを重視する仕組みづくりを進めています。
すでにトラックドライバーやメンテナンステクニシャン(設備保守担当者)向けの社内資格・研修プログラムを展開しており、熟練人材の育成を加速中です。さらに 2026年には、ChatGPTを開発したOpenAIと連携し、AIスキル教育プログラムを導入する予定です。これにより、現場スタッフも含めた全社員が AI を使いこなす力を身につけることを目指しています。
CEOダグ・マクミロン氏の考え方
ウォルマートCEOのダグ・マクミロン氏は次のように語っています。
「AI によって、ほぼすべての仕事が変わるだろう。重要なのは置き換えられるかどうかではなく、AI を使って仕事をどうより良くできるかだ。」
彼は、AIを人を減らすための仕組みではなく、「仕事の質を高めるツール」と捉えています。
現場のスタッフの仕事は少しずつ変化し、事務や管理職の仕事はより早いスピードで進化していくと見ています。
また、店舗マネージャーのように「人と関わりながらチームをまとめる力」と「デジタルスキル」を併せ持つ人材の重要性が今後さらに高まるとしています。AIの時代であっても、人間ならではの判断力やコミュニケーション能力が不可欠だという考えです。
今後の影響
Walmart のようにリスキリングや AI 教育に投資する企業が増えることで、次のような変化が見込まれます。
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企業の変化:採用や評価で「AIを使いこなす力」が重視されるようになる。
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教育・行政の変化:職業訓練や再教育の支援制度が拡充される。
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個人の変化:特に中高年層や職種転換を考える人の間で、AI学習や再教育のニーズが高まる。
結果として、「AIに対応できる人材」と「そうでない人材」の間で格差が生まれ、企業競争の新たな要因になると見られます。
まとめ
Walmartの取り組みは、単なる社内研修ではなく「企業が社会全体のスキルアップをリードする新しいモデル」を示しています。
AI時代に求められるのは、テクノロジーを理解することだけではなく、人の強みをどう生かすかという視点です。



